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赤い蝋燭と人魚/作:小川未明 絵:酒井駒子

赤い蝋燭と人魚

人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。
北の海にも棲んでいたのであります。

文:小川未明 絵:酒井駒子 出版社:偕成社 発行日:2002.01

北の海に棲む人魚の悲しいお話です。




小川未明(おがわびめい)は「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」とも呼ばれ、宮沢賢治などと並ぶ児童文学の第一人者です。
約70年前に書かれたお話に酒井駒子が美しい絵を添え、原作の雰囲気はそのままに新たに生まれ変わりました。

物語の始まり、普段耳にしない言葉や言い回しが一気に飛び込んできます。この数ページで読者は現代の現実の世界から切り離され、物語の世界に溶け込みます。読み進めるうちに古風な言葉の言い回しが自然になってくるから不思議です。

北の海の色は、青うございました。
ある時、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。
雲間から洩れた月の光がさびしく、波の上を照らしていました。

その人魚は妊娠(みもち)でありました。


冷たい、暗い、気の滅入りそうな海に暮らす人魚は、自分の子供にはこんな悲しい思いはさせたくない と思い、陸に産み落とすことを決めます。

赤ん坊は、蝋燭売りの老夫婦に拾われ、愛情深く育てられます。

やがて美しく成長した娘は、お爺さんの蝋燭作りを手伝い蝋燭に赤い絵の具で、魚や、貝や、海草を上手に描きました。
いつしか、この蝋燭を持っていると海で災難にあわない という噂まで流れ、絵を描いた蝋燭は飛ぶように売れました。


ある日、老夫婦のもとに香具師が尋ねて来ます。大金を出すから娘を売ってくれというのです。
はじめは承知しなかった老夫婦も、しだいに大金に心を奪われ、ついには娘を売る約束をしてしまいます。

娘は、手に持っている蝋燭に、せき立てられるので絵を描くことができずに、それをみんな赤く塗ってしまいました。


その夜、急に空模様が変わり、海は大暴風雨となります…



酒井駒子のイラストも物語にぴったりです。幻想的で悲しげで美しい人魚のイラストは物語の無情感をより引き立たせます。


11509289641576240.jpg


子供に読ませるには少し残酷な絵本だと思います。
理由は物語に救いがないから…。

物語は、日本の昔話で知られる「桃太郎」や「かぐや姫」と同じ“老夫婦と幼い子供”という構成で進んでいきます。
しかし結末は昔話とは180度違います。善が悪に変わるのです。

人間の醜さや残酷さを現しているのでしょう。
しかし、子供のうちは、善は善であってほしい。そんな気がします。


昭和初期にかけて、児童書は「教育的」な機能を強めていきます。未熟で白紙な子供の教育に雑誌はもってこいだった。
小川未明はそれを強く警戒してこんな言葉を残しています。

新興童話の名の下に、児童等を階級闘争の戦士たらしめんとする。闘士たることの悪いというのではない。それが、自からの意志であり、自由に選ばれたる確信であるなら、真に、それを革新の熱火と見做すことができる。しかし、それが強制であり、目的意識のために、認識なき者への指導であったなら、資本主義的暴力の児童を毒すことを憎む我等は、同じく、これをも否とし戦わなければならぬ。


もし、美と正義の世界が、現実に存在するものなら、それはまさしく『童話』の世界でなくてはならない。そして、この美しく、やさしく、平和なる世界の主人公はもとより子供であるが、また、美と正義と平和を愛する人々でもある。この世界ばかりは、一切の暴虐をゆるさなかった。
 いかなる権力も圧制も、かつてこの世界を征服することは能わなかった。これ、我が理想の世界である。



つまり、子供にとって美しいものは大人にとってもやはり美しいということ。
絵本も同じですよね。
様々な情報が溢れる現代、子供に何を与え何を伝えるかを大人が見極めなくてはいけないと思います。



■絵本作家のいわさきちひろも「赤い蝋燭と人魚」を絵本にしています。こちらは彼女の絶筆となった作品です。



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テーマ:絵本 - ジャンル:本・雑誌

コメント

更新待っていました!

小川未明のお話にぴったりの美しいイラストですね。
一度だけ読んだことがありますが、とても印象的な人魚の絵でした。
物悲しいけど美しい・・・。
「人魚姫」を想像して読んだら、それよりさらに悲しくて・・・。
でもとても日本的で。
絵本はそのままを感性で受けとめるものなのでしょうね。
教育ママは絵本を教育やしつけの道具に使おうとしますが、
それでは、絵本の醍醐味を損ねてしまう。
カオリさんのように大人の絵本を薦めてくれる人がいたら、
大人になっても絵本の本来の良さがわかるのだろうに。

  • 2006/07/15(土) 23:21:54 |
  • URL |
  • imuyam a #-
  • [ 編集 ]

お待たせしました!

久々の更新です(;^_^ A
今回は期待を裏切らない絵本ですよ。絶対オススメ。
物語が儚くて悲しくて、それにimuyamさんの言う通りとても日本的です。
この本に初めて出逢った時、実は立ち読みしただけで買わずに帰りました。でも家に帰ってからもずーっと気になっちゃって…。結局次の日の朝一番に本屋さんに行って買いました。
手に取った時、「置いて帰ってごめんね」というお決まりのセリフが頭に浮かびました(笑)
いい絵本に出逢った時はドキドキしますよね。
難しいこと考えずにそのドキドキを楽しみたいです♪

  • 2006/07/18(火) 22:26:39 |
  • URL |
  • カオリ #-
  • [ 編集 ]

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